アナログ規制「約99%見直し完了」でも行政手続は未完結?行政書士が確認したい5工程
顧客から「オンライン申請なら、許可証の受領までオンラインで終わりますか」と聞かれ、すぐには答えられなかった経験はないでしょうか。
申請画面が使えても、補正、手数料の納付、処分通知、許可証等の交付までオンライン化されているとは限りません。
アナログ規制の「約99%見直し完了」という数字も、行政手続の約99%がデジタル完結したことを示すものではありません。
本記事では、デジタル庁が公表した最新資料を基に、行政書士が案件ごとに確認したい工程と、電子・紙が混在する時期の管理方法を整理します。
「約99%見直し完了」が示すもの、示さないもの
見直しが必要な8,162件のうち8,052件が完了
デジタル庁が2026年5月15日に公表した集計によると、法令、告示、通知・通達を合わせたアナログ規制の該当数は12,205件です。このうち、見直しが必要とされた規制は8,162件で、2026年3月末までに8,052件の見直しが完了しました。残る110件は、2026年4月以降の完了予定とされています。
デジタル庁は、この結果を「見直しが必要な規制の約99%について、工程表等に基づく見直しが完了した」と説明しています。
ここで重要なのは、約99%の母数が「見直しが必要とされた8,162件」であり、数えている対象が規制条項等であることです。行政機関が扱う申請や届出の件数、オンラインで利用できる手続数、申請から通知まで完結した手続数を示した割合ではありません。
制度の進展を正しく評価するためにも、次の三つは分けて考える必要があります。
- 法令、告示、通知・通達などに含まれるアナログ規制の見直し
- 申請・届出をオンラインで提出できるようにすること
- 補正、納付、通知、許可証等の交付までを含むデジタル完結
「規制が見直された」という情報だけでは、個別の行政手続について、利用するシステムや必要書類、通知方法まで判断できません。
残る110件では書面掲示が85件
2026年4月以降に完了予定とされた110件の内訳は、次のとおりです。
| 分類 | 2026年4月以降の完了予定数 |
|---|---|
| 書面掲示 | 85件 |
| 往訪閲覧・縦覧 | 11件 |
| 定期検査・点検 | 10件 |
| その他経済界要望 | 3件 |
| 目視 | 1件 |
| 合計 | 110件 |
残件では、書面掲示の85件が最も多くなっています。一方、実地監査、常駐・専任、対面講習、FD等の記録媒体指定については、同集計上、見直しが必要とされた項目の2026年4月以降の完了予定数は0件です。
ただし、この件数だけから、特定の行政書士事務所や顧客企業にどの程度の影響があるかを判断することはできません。扱っている許認可や届出と該当する規制との関係を、個別に確認する必要があります。
行政手続の完結率へ読み替えてはいけない
アナログ規制のフォローアップと、行政手続のデジタル完結に向けた工程表では、対象範囲も判定単位も異なります。
前者は規制条項等の見直し状況を扱っています。後者は、年間手続件数が1万件以上の申請・届出と、それに対応する処分通知・受付通知を中心に、オンライン化の方針や実施状況を整理したものです。
また、行政手続の工程表には、申請側がオンライン化されていても、処分通知側が「当面見送り」とされた例があります。そのため、「アナログ規制の約99%が見直し完了した」という発表を、「行政手続の約99%が申請から通知までデジタルで完結した」と読み替えることはできません。
最新の行政手続フォローアップ資料にも、双方がオンライン化された「完全完結手続」の総数や割合は明示されていません。確認できない割合を推測で補わないことが、顧客への説明でも重要です。
オンライン申請と「デジタル完結」はどこが違うのか
工程表は申請側と通知側を分けて管理している
デジタル庁は、年間手続件数が1万件以上の申請・届出と、それに対応する処分通知・受付通知を対象に、エンドツーエンドでのデジタル完結に向けた工程表を2023年12月20日に取りまとめました。
2026年7月17日に公表された最新のフォローアップ資料では、主に2025年度末までの対応状況が整理されています。資料上、各手続の状況は「申請・届出側」と「処分通知・受付通知側」に分けて掲載されています。
行政書士がオンライン化の状況を調べるときは、申請の入口だけでなく、行政機関から結果を受け取る出口も確認しなければなりません。さらに実務では、その間にある添付書類、本人確認、補正、手数料納付なども確認対象になります。
例えば、次のように分解すると、未確認の工程が見えやすくなります。
申請・届出 → 添付書類・本人確認 → 補正・手数料納付 → 処分通知・受付通知 → 許可証等の交付 → 保管
オンラインの申請画面を利用できるという理由だけで、この全工程がデジタル化されているとは判断できません。
古物営業では申請側がオンライン化、通知側は当面見送り
行政書士業務との接点が分かりやすい例が、古物営業関係の手続です。
最新の工程表によると、古物商・古物市場主の許可申請は、2025年12月15日からe-Gov電子申請によるオンライン対応が始まりました。古物営業許可証の亡失届出・再交付申請や、許可証の書換え申請についても、申請側は同日からオンライン対応済みとされています。
一方、これらの処分通知側は、工程表上「当面見送り」です。これは、申請の入口と行政機関からの通知の出口で、オンライン化の状況が異なる具体例です。
ただし、工程表の該当欄だけでは、現在の許可証等の交付方法が紙、郵送、窓口受領のいずれであるかまでは確認できません。代理申請の可否、委任状、電子署名、代理人アカウント、必要書類の取扱いについても、同資料から一律の結論は出せません。
実際の案件では、e-Gov上の案内だけで判断せず、所管行政機関や提出先の最新案内を確認する必要があります。
「実施済」でも全国一律とは限らない
工程表で使われる「実施済」の意味にも注意が必要です。
最新資料には、e-Govなど既存システムの利用、電子メールによる提出、地方公共団体への技術的助言など、複数のオンライン化方法が記載されています。国家公務員共済関係の一部手続では、受付通知を電子メールで行える例もあります。
自治体の自治事務では、国の共通システムで全国一律にオンライン化された場合だけでなく、所管省庁が技術的助言などによって自治体へ働きかけた場合も「実施済」と整理されている例があります。
したがって、「実施済」という表示だけを見て、すべての自治体が同じシステムを導入済みである、あるいは全国の申請者が同じ条件でオンライン完結できると判断することはできません。
提出先が自治体である案件では、少なくとも次の項目を、その自治体の公式案内で確認します。
- 実際にオンライン申請を受け付けているか
- どの申請システムを利用するか
- 代理申請に対応しているか
- 添付書類を電子データで提出できるか
- 原本確認や本人確認が別途必要か
- 手数料をどの方法で納付するか
- 補正連絡がどこに届くか
- 通知書や許可証等をどの方法で受け取るか
過去に別の自治体で扱った同種案件の情報を、そのまま流用しないことも大切です。
行政書士が案件ごとに確認したい5つの工程
1.申請・届出
最初に確認するのは、オンライン申請の利用可否と利用システムです。受付開始日だけでなく、対象となる申請区分や利用可能な申請者も確認します。
行政書士が関与する案件では、本人が申請できることと、代理人が同じ方法で申請できることは別の論点です。代理申請の可否、委任状の形式、電子署名、代理人アカウントの利用方法は、手続ごとに異なる可能性があります。
今回確認したデジタル庁の資料では、これらの要件を全手続について一括確認することはできません。案件台帳には「オンライン対応済み」とだけ記載せず、「本人申請」「代理申請」「利用アカウント」などを分けて記録するのが実務的です。
2.添付書類・本人確認・手数料・補正
次に、申請画面の外側で必要になる作業を確認します。
申請書をオンライン送信できても、添付書類の原本提出や対面での本人確認が必要であれば、その工程を別途予定へ組み込まなければなりません。手数料の納付方法も、オンライン決済、納付書、窓口などのうち、どの方法が使えるのかを確認します。
補正連絡については、申請システム内の通知、登録した電子メール、電話など、受信経路を特定します。補正期限が設けられる場合に備え、誰が、どの画面や受信箱を、どの頻度で確認するかまで決めておくと管理しやすくなります。
正式な連絡経路は個別手続の案内に従います。電子メールが届くことだけを前提にし、申請システム内の通知確認を省略する、といった運用は避ける必要があります。
3.処分通知・受付通知・許可証等の交付
申請後は、受付通知、処分通知、通知書、許可証等をどの方法で受け取るのかを確認します。
確認項目は、単に「オンライン」か「紙」かではありません。例えば、次のように分けて記録します。
- 受付完了は申請システム内で確認するのか
- 補正依頼は電子メールにも届くのか
- 処分通知は電子データとして交付されるのか
- 許可証等の受領に別の手続が必要か
- 依頼者本人と代理人のどちらが受領するのか
- 受領後、依頼者へいつ、どの方法で引き渡すのか
処分通知側が「当面見送り」とされている場合も、具体的な交付方法を推測してはいけません。所管機関や提出先の案内を確認し、分からない項目は台帳に「未確認」と記録します。
4.電子データと原本の保管
電子申請が増えると、申請データ、送信記録、補正履歴、電子メール、通知書など、保存対象も複数の場所へ分散しやすくなります。さらに紙の許可証等が加わると、電子ファイルだけを検索しても案件全体を把握できません。
編集部では、電子データと物理的な原本を共通の案件番号で関連付ける方法が有効だと考えます。例えば、電子フォルダ名、案件管理表、メール件名、紙の保管ファイルに同じ番号を付け、台帳には原本の保管場所も記録します。
保存期間やアクセス権限は、関係法令、個別手続の案内、事務所の情報管理規程に従って決める必要があります。申請書や添付書類には個人情報や企業情報が含まれる可能性があるため、業務上必要な担当者だけが閲覧できる状態にすることも欠かせません。
5.提出先自治体・所管機関の実装差
最後に確認したいのが、提出先による違いです。同じ名称の手続でも、自治体や所管機関によって、利用システム、添付条件、本人確認、納付、通知方法が異なる可能性があります。
案件台帳には、確認結果だけでなく、確認日と参照した公式ページを残します。制度やシステムは更新されるため、過去案件の記録を再利用するときも、申請前に公式案内の更新有無を確認します。
行政書士が依頼者へ案内するときも、「国の資料ではオンライン化対象です」と説明するだけでは足りません。「今回の提出先ではどの工程までオンラインで、何が別途必要か」を示すことが、実務上の判断材料になります。
完全デジタル化を待たずに整えたい案件管理
「オンライン対応済み」一列ではなく行政手続台帳を作る
完全なデジタル完結を待ってから業務フローを整える必要はありません。むしろ電子、紙、対面が混在する時期には、それぞれの所在と担当者を追える台帳が役立つと考えられます。
最低限、次の項目を記録します。
| 台帳項目 | 記録する内容の例 |
|---|---|
| 手続名 | 正式名称、申請区分 |
| 提出先 | 所管行政機関、自治体、担当部署 |
| 期限 | 申請期限、更新期限、補正期限 |
| 申請方法 | オンライン、郵送、窓口など |
| 利用システム | e-Gov、自治体の申請サービスなど |
| アカウント管理 | 管理責任者、利用権限、更新期限 |
| 添付書類 | 電子提出の可否、原本確認の有無 |
| 本人確認・代理要件 | 電子署名、委任状、代理申請の可否 |
| 手数料 | 金額、納付方法、納付確認 |
| 補正連絡 | 受信経路、確認担当、対応期限 |
| 通知・交付 | 通知方法、許可証等の受領方法 |
| 保管 | 電子フォルダ、原本の保管場所 |
| 確認記録 | 最終確認日、参照した公式案内 |
すべての項目を最初から埋められない場合は、空欄にせず「未確認」と記載します。未確認項目が可視化されれば、申請前に何を調べるべきか判断できます。
電子と紙を共通の案件番号で結び付ける
例えば、電子申請は担当者A、郵送物は総務担当者B、原本は書庫で管理している場合、情報が分断されるおそれがあります。申請システム上では完了していても、許可証等の受領や依頼者への引渡しが台帳に反映されていなければ、案件全体の完了を判断できません。
共通の案件番号を使い、申請データ、電子メール、紙の通知、許可証等を一つの案件として追跡します。これは完全なペーパーレス化を目指す施策ではなく、検索と所在確認の負担を減らすための改善です。
通知確認とアカウント管理を属人化させない
申請用アカウント、電子証明書、認証端末を一人だけが管理していると、休職、異動、退職などで案件を継続できなくなる可能性があります。
責任者、利用可能者、代理担当者、更新期限、異動・退職時の処理をあらかじめ定めます。ただし、認証情報を無秩序に共有してよいわけではありません。利用システムの規約や事務所の情報セキュリティ方針に従い、必要な権限だけを付与します。
通知確認についても、担当者と確認頻度を決めます。補正依頼を受けたら、期限、対応者、提出日、完了確認までを台帳へ記録します。
代表的な1手続で工数と漏れを測る
すべての手続を一度に見直すのが難しい場合は、件数が多い手続、更新期限がある手続、ミスの影響が大きい手続から1件を選びます。
申請準備、提出、補正、通知確認、許可証等の受領、保管までに要した時間を測り、どこで待ち時間や二重入力が生じたかを確認します。オンライン化の効果も、申請書を送信するまでの時間だけでなく、案件を最終的に完了確認するまでの総工数で評価します。
今回の一次情報から、具体的な工数削減率や投資対効果を示すことはできません。自事務所の件数と実測した時間を基に、台帳の整備で足りるのか、案件管理ツール等を検討するのかを判断するのが適切です。
次期オンライン申請サービスは提供開始後に小規模検証する
デジタル庁は、スマートフォン等で手続が完結することを目指し、自治体行政手続のオンライン化を進めています。優先的にオンライン化を推進する対象として56手続が整理され、次期オンライン申請サービスでは、申請内容の補正連絡や通知書のオンライン送付を含むデジタル完結が目標とされています。
同サービスは2025年4月に一部自治体で先行実証が始まり、2026年9月以降の本格運用開始が予定されています。2026年6月16日時点の先行実証対象には、出生届、児童手当の認定請求、国民健康保険の加入・脱退届、上下水道の使用開始届などが含まれます。
ただし、本格運用の開始は予定であり、確定した開始日や全国展開の時期は確認できません。業務フローを変更する際は、対象自治体、対象手続、利用条件、実際の提供開始を公式案内で確認します。
利用可能になった場合も、まず少数の案件で、申請操作だけでなく、補正連絡、通知書の受領、データ保存、権限管理まで検証することが望ましいと考えられます。
まとめ|まず1件の手続を入口から受領まで棚卸しする
アナログ規制の「約99%見直し完了」は、見直しが必要とされた8,162件の規制のうち、8,052件が2026年3月末までに完了したことを示す数字です。行政手続の約99%が、申請から通知までデジタル完結したという意味ではありません。
行政書士が確認すべきなのは、「オンライン申請できるか」という一点だけではなく、申請、添付書類・本人確認、補正・納付、通知・許可証等の交付、保管、提出先ごとの実装差です。
今日から取れる行動は、次のとおりです。
- 直近で更新期限を迎える、または取扱件数の多い手続を1件選びます。
- 所管行政機関または提出先自治体の公式案内を開きます。
- 申請、添付、本人確認、補正、納付、通知、交付、保管の各工程を台帳へ記入します。
- 公式案内で判断できない項目は「未確認」と記録し、所管機関や提出先へ確認します。
- アカウント管理者、通知確認担当、代理担当者、原本の保管場所を決めます。
- 参照した公式ページと確認日を残し、次回申請時に更新の有無を確認します。
当面の改善目標は、すべてを無理にペーパーレス化することではありません。電子と紙が混在していても、案件の期限、現在地、通知の受信先、原本の所在を事務所内で追える状態をつくることです。
出典
- デジタル庁「行政手続のデジタル完結に向けた工程表のフォローアップ(令和7年度オンライン化状況)」(2026-07-17)
- デジタル庁「アナログ規制見直しの取組」(2026-07-17)
- デジタル庁「アナログ規制に係る工程表及び通知・通達の見直し方針のフォローアップ結果」(2026-05-15)
- デジタル庁「アナログ規制の見直し状況に関するダッシュボード」(2026-05-15)
- デジタル庁「行政手続のオンライン化」(2026-06-16)
この記事はAIが生成し、編集長のチェックを受けて公開しています。
最終更新日:2026年7月31日
編集:YataGarasu編集部