士業の生成AI「禁止業務」はある?開業前に決めたい3つの利用ルール

士業の生成AI「禁止業務」はある?開業前に決めたい3つの利用ルール

開業準備を進めながら生成AIを試していると、「申請書の下案には使えるのか」「顧客から受け取った資料を入力してよいのか」と、手が止まる場面があります。禁止業務の一覧を探しても、自分の業務にそのまま当てはめられる基準が見つからず、利用を全面的に止めるべきか迷う方もいるでしょう。

今回確認した一次情報からは、行政書士や中小企業診断士の特定業務を名指しした統一的な禁止一覧は確認できませんでした。一方、情報の入力制限、サービス条件の確認、生成物に対する人間の確認、組織的なルール整備は、公的資料が示す重要な対策です。

個人情報保護法上の取扱いや士業固有の業務規則に照らした個別判断は、具体的な契約関係やデータ処理の条件によって結論が変わります。必要な場合は、所属団体、関係機関または当該分野の有資格者へ確認してください。本記事では、士業固有の適法性判断ではなく、開業時に生成AIを導入するために事務所側で何を決め、どのように運用するかを扱います。

士業の生成AIに統一的な「禁止業務一覧」はあるのか

公的資料から確認できること

IPAは2026年3月、「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版を公開しました。対象は中小企業の経営者や、情報セキュリティ対策を実践する責任者・担当者であり、行政書士や中小企業診断士だけを対象とした資料ではありません。

同ガイドラインでは、生成AIを利用する前に、サービスの利用規約とプライバシーポリシーを確認し、サービス提供者が入力データをどのように取り扱うか把握するよう示しています。また、機密性の高い情報や個人情報など、外部への流出が問題になる情報を入力しないこと、生成物の正確性と法的リスクを人間が確認することも示されています。

個人情報保護委員会も、2023年6月に公表した注意喚起で、個人情報を含むプロンプトを入力する際の留意点を示しています。個人情報取扱事業者が個人情報を入力する場合は、特定した利用目的の達成に必要な範囲内であるかを十分に確認する必要があります。

さらに、本人の同意を得ずに個人データを入力し、そのデータが回答の生成以外の目的で取り扱われる場合は、個人情報保護法に違反する可能性があるとされています。個別の入力が本人同意、委託、第三者提供などのどの論点に当たるかは、契約関係や実際のデータ処理によって異なります。具体的な取扱いは、個人情報保護委員会の窓口や当該分野の専門家へ確認してください。

公的資料から確認できる対策は、主に次の5点です。

  • 外部流出が問題になる情報を生成AIへ入力しない
  • 利用規約やデータの取扱方針を事前に確認する
  • AIの生成物を人間が確認する
  • 利用方針、責任者、実施手順を文書化する
  • 誤入力などの事故に備えて対応体制と手順を整える

「法的な禁止」と「事務所が決める禁止」を分ける

今回確認した資料には、「許認可申請書の作成は禁止」「経営診断には利用できない」といった、業務名による一律の禁止一覧はありません。そのため、「禁止業務は一切ない」とも、「特定の業務では必ず禁止される」とも断定できません。

ここでは、次の2種類を分けて考える必要があります。

一つは、法令、職業上の規律、契約などから生じる制限です。適用の有無は、業務内容、入力するデータ、利用目的、契約関係などによって個別に判断されます。

もう一つは、事務所がリスク管理のために定める自主的な禁止です。たとえば、「顧客名が含まれる資料は、事前承認なしでは入力しない」「AIが作った顧客向け文書は、案件責任者の確認前に送信しない」といった規則が該当します。

この2種類を混同すると、根拠のない禁止範囲を広げたり、反対に必要な確認を省いたりするおそれがあります。開業時には、業務名だけで線を引くのではなく、入力情報と成果物の使い道を基準に、自主ルールとして明文化する方法が現実的です。

開業時に決めたい3つの禁止ルール

生成AIへ入力しない情報

最初に決めたいのは、「どの業務に使わないか」よりも「何を入力しないか」です。

行政書士であれば、顧客の氏名や連絡先、本人確認資料、案件資料、未公開の申請内容、契約書の原文などを扱う場面が考えられます。中小企業診断士であれば、企業名と結び付いた売上データ、未公開の事業計画、組織上の課題、取引先情報などが候補になります。

これらは、すべてが一律に同じ法的分類になるという意味ではありません。編集部では、利用目的とサービス条件を個別に確認できない段階では、少なくとも次の情報を入力禁止の候補にする運用が適切だと考えます。

  • 顧客や関係者を識別できる情報
  • 顧客から預かった原本や資料の内容
  • 公開前の申請内容や事業計画
  • 契約上、秘密として扱う必要がある情報
  • 外部へ流出した場合に顧客や関係者へ影響が及ぶ情報
  • パスワード、認証情報、非公開のシステム情報

氏名を削除しただけで常に安全になるわけではありません。企業名を消しても、所在地、業種、売上規模、相談内容などの組み合わせから対象を推測できる場合があります。匿名化の十分性はデータの内容によって異なるため、「名前を消したから入力可」という一律の運用は避けたほうがよいでしょう。

同様に、有料プランであることだけを理由に、顧客情報を入力できるとは限りません。入力データの学習利用、保存期間、保存地域、管理者による削除の可否などは、サービス、契約プラン、組織設定によって異なります。

AI出力だけで完結させない作業

二つ目は、AIの出力だけで作業を完了させないことです。

生成AIは、公開情報の仮整理、論点の洗い出し、打ち合わせで使う質問案、一般的な説明文の下案などを作る補助には活用できる可能性があります。ただし、生成物には不正確な内容が含まれる場合があり、実在しない制度、誤った要件、古い情報が混ざる可能性もあります。

申請、診断、契約など、正確性や専門判断が成果に影響する作業では、AIの回答を結論として扱わず、根拠となる一次情報や案件資料を人が確認する工程が必要です。どの資格者による確認が必要か、どの作業で生成AIを利用できるかは、個別の業務規則や案件内容によって変わります。所属団体や関係機関の規則も確認したうえで判断してください。

たとえば、公開されている制度資料をもとに「顧客へ確認する質問の候補」を作る用途と、顧客の具体的な事情を入力して「申請できるか」を判断させる用途では、扱う情報と成果物の責任が異なります。前者は準備作業の補助として検討しやすい一方、後者をAI出力だけで完結させる運用は避ける必要があります。

確認なしで顧客へ提供しない成果物

三つ目は、AIが関与した成果物を、確認しないまま顧客へ渡さないことです。

対象には、顧客向けの説明資料、申請や提案に用いる文書、経営課題を整理した資料、メールの回答案、Webサイトへ掲載する文章などが含まれます。誤りだけでなく、顧客の意図と異なる表現、第三者の権利に関わる内容、断定できない事項が紛れ込んでいないかも確認します。

IPAのガイドラインは、人間が生成物の正確性と法的リスクを確認するよう示していますが、確認者の役職や資格までは指定していません。そのため、誰を確認者とするかは、成果物の用途に応じて事務所が定める運用事項です。

一人事務所では、作成者と確認者を別人にできない場合もあります。その場合でも、「生成直後の確認」と「送信・提出前の最終確認」を別の工程にできます。確認日時、参照した根拠、修正した箇所を短く記録すれば、単に画面を読み返すだけの確認よりも、作業を再現しやすくなります。

入力可否を「可・要確認・禁止」の3段階で判断する

入力可否を「使える」「使えない」の二択にすると、判断が難しい情報を担当者の感覚で入力しやすくなります。編集部では、開業時の運用案として「可・要確認・禁止」の3段階に分ける方法を提案します。

区分 情報例 利用前の確認事項
入力可 公開済みの官公庁資料、一般的な質問、特定の顧客に結び付かない架空例 出典の確認、サービス条件、生成物の正確性
要確認 個別案件に関係する情報、非公開だが入力の必要性を検討できる情報 利用目的、契約関係、学習利用、保存条件、削除可否、責任者の承認
入力禁止 機密性が高い情報、個人情報など、外部流出が問題になる情報 原則として入力せず、別の作業方法を選ぶ

この表は法令上の分類ではなく、編集部による運用案です。実際の区分は、情報の内容、利用目的、顧客との契約、採用サービスの条件によって変わります。

入力可と考えやすい情報

公開されている官公庁資料の要点を仮整理する、一般的な質問項目を作る、架空の事例で文章の構成を試すといった用途は、顧客固有の情報を扱う作業よりも導入初期の試行に向いていると考えられます。

ただし、公開情報であっても、生成AIの回答が正確であるとは限りません。回答に記載された制度名、日付、数値、URLなどは元資料と照合します。また、公開情報を入力する場合にも、利用するサービスの規約を確認する必要があります。

責任者による事前確認が必要な情報

個別案件に関係する情報を入力する必要が生じた場合は、その場で判断せず、少なくとも次の点を確認します。

  • その情報を入力する必要があるか
  • 特定済みの利用目的の範囲内か
  • 顧客との契約や事務所の方針に反しないか
  • 入力内容が機械学習へ利用されるか
  • データがどの程度保存されるか
  • 入力後に管理者が削除できるか
  • 誰が利用を承認し、生成物を確認するか

一人事務所であれば、自分で確認することになります。その場合は、利用日、サービス名、利用目的、入力情報の区分、確認した規約の日付を記録しておくと、後から判断過程をたどれます。

個人情報を含む入力が法令上許されるかは、具体的な利用目的やデータ処理条件によって異なります。判断が難しい場合は、入力を保留し、個人情報保護委員会の公表資料や相談窓口、必要に応じて専門家へ確認してください。

入力禁止とする候補

開業直後は、採用サービスの設定や管理機能を十分に把握できていないことがあります。その段階では、外部流出が問題になる情報を広めに入力禁止とし、公開情報だけで試行するほうが管理しやすいでしょう。

入力禁止にした情報は、生成AIを使わずに処理する、顧客を特定できない架空データへ置き換えて構成だけを検討するなど、代替手順も併記します。「禁止」とだけ書くと、時間に追われたときに現場判断で例外が作られやすいためです。

一枚の生成AI利用方針に記載する9項目

開業時から長い規程を作る必要はありません。まずはA4用紙一枚程度を目安に、判断に必要な項目をまとめます。作成時間は、採用サービスの規約確認を除けば、最初のたたき台に60〜90分程度を確保する方法が考えられます。これは編集部による作業時間の目安であり、サービス数や確認範囲によって変わります。

利用前に決める項目

  1. 利用目的
    公開情報の整理、質問案の作成、一般的な文章の下案など、導入当初に認める用途を書きます。

  2. 利用を認めるサービスとアカウント
    サービス名だけでなく、業務用アカウント、契約プラン、必要な設定を記録します。個人用アカウントとの混在を避ける運用も検討します。

  3. 入力してはならない情報
    顧客名、連絡先、案件資料、未公開情報など、事前確認なしでは入力しない情報を具体例とともに書きます。

  4. 個別確認が必要な情報
    「要確認」に該当する情報と、承認する人、確認記録の残し方を決めます。

出力後に決める項目

  1. AIだけで完結させない作業
    顧客への助言、提出物、専門判断に関係する成果物など、必ず人が根拠を確認する作業を定めます。

  2. 顧客提供前の確認者
    社内用メモ、顧客向け資料、申請・提案関連文書、Web公開物など、用途ごとに確認者を設定します。

  3. プロンプト、生成物、確認記録の保存方法
    何を記録し、どこへ保存するかを決めます。公的機関が士業事務所向けに指定した統一的な保存先や保存期間は、今回確認した資料にはありません。保存期間は既存の案件管理方針との整合性を確認し、記録自体に個人情報を過剰に含めない設計が必要です。

継続運用のために決める項目

  1. 誤入力時の連絡先と初動
    最初に報告する責任者、サービス提供者の問い合わせ先、事実を記録する場所を記載します。一人事務所では、外部の相談先や所属団体の窓口を確認しておく方法もあります。

  2. 規程とサービス条件の見直し担当者
    規約やプライバシーポリシーの確認担当者と頻度を決めます。開業時は、採用時の確認日に加え、3か月後などの見直し日を先に予定へ入れておくと、確認漏れを防ぎやすくなります。

この9項目は、公的機関指定の様式ではありません。IPAなどが示す考え方を、開業前または開業直後の事務所で実行できる形へ落とし込んだ編集部案です。

着手順序に迷う場合は、最初の30分で利用サービスと用途を一覧化し、次の30分で入力禁止情報と確認者を決め、その後にサービスの利用規約やデータ取扱条件を確認してください。規約確認で未確認事項が残ったサービスは、業務利用を開始せず「保留」と記録します。

誤入力に備えて開業前に初動手順を決める

事故対応は、発生後に一から考えると、確認や連絡が遅れる可能性があります。IPAのガイドラインは、緊急時の対応体制や復旧手順を事前に整え、模擬訓練を行うことも有効としています。

編集部による初動手順の例は、次のとおりです。

  1. 当該サービスの業務利用を一時停止する
  2. 入力日時、利用者、入力内容、使用サービス、プラン、設定を記録する
  3. 事務所の責任者へ報告する
  4. サービス提供者の削除手段と問い合わせ先を確認する
  5. 入力した情報の種類、対象者、影響範囲を調査する
  6. 顧客への通知、関係機関への報告、専門家への相談の要否を検討する
  7. 原因と再発防止策を記録し、利用方針を見直す

最初に記録する事実

最初の段階では、推測で影響を断定せず、分かっている事実を残します。入力した日時、使用したアカウント、プロンプトの内容、添付ファイル、サービスの設定、入力後に行った操作を記録します。

ただし、証拠を残そうとして、機密情報を別の個人端末や未承認のクラウドへ複製すると、管理対象が増えます。記録場所は利用方針であらかじめ指定し、必要な範囲に限定します。

サービス提供者と影響範囲を確認する

次に、サービスの管理画面や公式ヘルプで、履歴の削除、アカウントの一時停止、管理者による操作、問い合わせ方法を確認します。削除ボタンを押しただけで、保存済みデータが直ちにすべて消去されるとは限りません。契約条件や提供者の説明を確認し、不明な点は問い合わせます。

併せて、入力した情報が誰に関係するか、本人を識別できるか、どの程度の機密性があるか、外部へ出力された可能性があるかを調べます。

外部対応は事案ごとに判断する

顧客への通知や個人情報保護委員会への報告が必要かどうかは、情報の内容、漏えい等への該当性、影響範囲などによって異なります。今回確認した資料だけから、一律の基準や結論を示すことはできません。

実際に誤入力が発生した場合は、個人情報保護委員会などの公式情報を確認し、必要に応じて関係機関や専門家へ相談してください。本記事の手順だけで法的判断を完結させないことが重要です。

開業前の確認には、実際の顧客情報を使わず、架空の入力事故を想定した10〜15分程度の模擬訓練が利用できます。責任者へ連絡できるか、サービスの問い合わせ先を見つけられるか、事実を指定場所へ記録できるかを試します。一人事務所でも、必要な画面や連絡先を迷わず開けるか確認する意味があります。

まとめ

今回確認した一次情報には、行政書士や中小企業診断士を対象とした統一的な生成AI禁止業務一覧はありませんでした。しかし、禁止一覧がないことは、自由に顧客情報を入力できることや、AIの回答をそのまま顧客へ提供できることを意味しません。

開業時には、業務名による一律の分類よりも、「入力しない情報」「AIだけで完結させない作業」「確認なしで提供しない成果物」の3点を決めることが重要です。

今日から着手する場合は、次の順序で進めてください。

  1. 利用中または採用予定の生成AIサービスと業務用途を一覧にする
  2. 各サービスの利用規約、プライバシーポリシー、学習利用、保存・削除条件を公式サイトで確認する
  3. 入力情報を「可・要確認・禁止」の3段階に分ける
  4. 顧客へ提供する成果物の確認者と、誤入力時の連絡先を決める
  5. 決定事項と未確認事項を一枚の利用方針にまとめ、確認日と次回見直し日を記載する

個別の適法性や士業固有の規則について判断が必要な箇所は、所属団体、関係機関または当該分野の有資格者へ確認してください。その間は対象情報を入力せず、公開情報や架空の事例を使った試行に範囲を限定することで、開業準備を止めずに運用設計を進められます。

出典一覧

  1. IPA「『中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン』第4.0版を公開」(2026-03-27)
  2. IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版」(2026-03-27)
  3. 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(2023-06-02)

この記事はAIが生成し、編集長のチェックを受けて公開しています。

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