IPAが「緊急」としたMicrosoft製品の脆弱性、士業事務所が確認すべき7項目【2026年7月】
Microsoftは2026年7月14日(米国時間)、Microsoft製品の月例セキュリティ更新プログラムを公開しました。IPAは翌15日、この脆弱性情報を「緊急」として、セキュリティ更新プログラムを至急適用するよう呼びかけています。
特に、AD FSとオンプレミス版SharePoint Serverに関係する2件では、更新プログラムの公開前から悪用が確認されています。
ただし、Microsoft製品を利用するすべての組織が、同じ脆弱性の影響を受けるわけではありません。
本記事では、士業事務所や中小企業が「対象環境」「更新結果」「再起動」「業務動作」を確認する順序を、7項目のチェックリストとして整理します。
IPAが「緊急」とした2026年7月のMicrosoft脆弱性とは
「緊急」は情報公開時点で悪用が確認されている区分
IPAは2026年7月15日、「Microsoft 製品の脆弱性対策について(2026年7月)」を公開し、重要なセキュリティ情報の区分を「緊急」としました。
IPAの定義では「緊急」は、影響度の高いセキュリティ上の問題が公開され、かつ情報公開時点で、その問題を悪用した攻撃が行われている場合に付される区分です。IPAは利用者や管理者に対し、「至急、セキュリティ更新プログラムを適用してください」と案内しています。[1]
今回の「緊急」は、単に深刻度の高い脆弱性が見つかったという意味だけではありません。すでに悪用が確認されていることを踏まえ、対象製品を使用している組織には早期の確認と対応が求められています。
一方、2026年7月29日時点で確認した公式資料には、国内の士業事務所における被害件数、攻撃主体、具体的な悪用事例は掲載されていません。そのため、「士業事務所が狙われている」「国内で被害が拡大している」とは断定できません。
公開前の悪用が確認された2件
MicrosoftとIPAの公表情報では、次の2件について、更新プログラムの公開前に悪用が行われていたことが確認されています。[1][2]
CVE-2026-56155:Active Directoryフェデレーションサービス(AD FS)の特権昇格の脆弱性CVE-2026-56164:Microsoft SharePoint Serverの特権昇格の脆弱性
AD FSは、複数のシステム間で利用者の認証情報を連携する仕組みです。主にWindows Server環境で運用されます。すべての小規模事務所が導入しているとは限りませんが、利用の有無が分からない場合はサーバー管理者や保守事業者への確認が必要です。
CVE-2026-56155では、AD FSが秘密鍵を保護するために使用するDistributed Key Manager(DKM)コンテナーのアクセス制御が問題となります。2026年7月14日以降のWindowsセキュリティ更新を適用すると、不安全なアクセス制御リスト(ACL)を自動検出する監査モードが始まります。[4]
ここで注意したいのは、2026年7月時点では監査段階であり、ACLが自動的に修復されるわけではないことです。Microsoftは、すべてのAD FSサーバーへ更新を適用し、AD FS AdminイベントログのイベントID 1132を確認するよう案内しています。Windows Server 2016以降で予定されている2026年10月の自動修復段階とは区別して対応する必要があります。
CVE-2026-56164は、オンプレミス、つまり自組織やデータセンター内に設置したSharePoint Serverに関係する脆弱性です。Microsoftは、SharePoint Server Subscription Edition向けにKB5002882、SharePoint Server 2016向けにKB5002891を公開しています。[5][6]
今回確認した公式資料だけでは、Microsoft 365上で提供されるSharePoint Onlineの利用者が、これらの更新プログラムを自ら適用する必要があるとは確認できません。SharePoint ServerとSharePoint Onlineを同じ作業対象として扱わないよう注意してください。
対象製品は幅広いが、影響は個別に確認する
2026年7月の更新は、Windows 11、Windows Server、Microsoft Office、SharePoint、Exchange、SQL Server、Dynamics 365、Azureなど幅広い製品・コンポーネントを対象としています。.NET、Visual Studio、Microsoft Defenderについても更新が案内されています。[2][3]
ただし、製品ファミリに示された「最大深刻度」は、その製品群に含まれる脆弱性のうち最も深刻なものを示します。その製品を使用するすべての端末が、すべての脆弱性の影響を受けるという意味ではありません。
実際の影響は、導入製品、バージョン、エディション、構成、更新プログラムの適用状況によって異なります。製品名だけで影響を断定せず、自組織の環境とMicrosoftの最新情報を照合することが重要です。
まず自事務所の環境を3つに分類する
対応の出発点は、事務所内の環境を次の3つに分類することです。技術的な構成が分からなくても、「分からない」という状態を明確にすれば、次に誰へ確認すべきかを決められます。
1. AD FSまたはオンプレミス版SharePoint Serverがある
AD FSまたはオンプレミス版SharePoint Serverを運用している場合は、公開前悪用が確認された2件との関係から、優先して確認するのが合理的と考えられます。
サーバー管理者または保守事業者へ、少なくとも次の情報を確認してください。
- 製品名、バージョン、エディション
- 2026年7月14日以降の更新プログラムの適用状況
CVE-2026-56155またはCVE-2026-56164への対応状況- 更新の正常完了を確認した方法
- 再起動や追加作業の要否
- 更新失敗や保留中の作業の有無
AD FSの場合は、イベントID 1132の確認状況も尋ねます。イベントが記録されていた場合の具体的な修復操作は、Microsoftの案内を参照し、サーバー管理者や保守事業者の判断に基づいて進める必要があります。
SharePoint Serverの場合は、利用中のバージョンに対応した更新プログラムが適用されているかを確認します。「SharePointを使っている」という情報だけでは、オンプレミス版かSharePoint Onlineかを判別できないため、サービスの提供形態まで確認してください。
2. Windows端末やOfficeが中心である
AD FSやオンプレミス版SharePoint Serverを使用していない小規模事務所では、Windows端末とOffice製品の更新完了確認が主要な作業になると考えられます。
セキュリティ更新は通常、Windows Updateを通じて自動的にダウンロード、インストールされます。しかし、自動更新が有効であっても、更新が正常に完了したことまでは保証されません。ダウンロードやインストールの失敗、再起動待ちが残っている可能性があります。
そのため、「自動更新がオンになっている」という設定だけで対応済みとせず、端末ごとに更新履歴、エラー表示、再起動の状態を確認します。Officeなど、Windows以外に実際に使用しているMicrosoft製品についても、製品名とバージョンを棚卸ししてください。
3. サーバーや製品の構成が分からない
IT担当者がいない事務所では、AD FSやSharePoint Serverを導入しているか分からないこともあります。この場合、「分からない」を「該当なし」と扱わないことが大切です。
まず、事務所で使用する端末、サーバー、Microsoft製品、保守契約の一覧を用意します。そのうえで、保守事業者に対象製品の有無と更新状況を照会してください。
経営者や所長が脆弱性の技術的な該当性を自ら判定する必要はありません。対象範囲、対応責任者、完了状況、未対応事項を把握し、専門的な判断を管理者や保守事業者へ引き継ぐことが現実的です。
士業事務所が確認すべき7項目
税理士事務所をはじめ、顧客情報を扱う士業事務所や中小企業では、次の7項目を順番に確認してください。この順序はMicrosoftやIPAが士業向けに提示した公式手順ではなく、一次情報を基に編集部が整理した実務上の確認案です。
1. AD FSを運用しているか
AD FSの有無と、運用しているWindows Serverのバージョンを確認します。利用している場合は、2026年7月14日以降の更新適用状況とイベントID 1132の確認状況を、管理者または保守事業者へ尋ねてください。
2026年7月の更新は監査モードの開始であり、不安全なACLを自動変更する段階ではありません。更新を適用しただけで、追加確認まで完了したと判断しないようにします。
2. オンプレミス版SharePoint Serverを運用しているか
オンプレミス版SharePoint Serverを利用している場合は、製品のバージョンと該当するセキュリティ更新の適用状況を確認します。
SharePoint Onlineのみを利用している場合に、KB5002882やKB5002891を利用者が手動適用する必要があるとは、今回確認した資料からは判断できません。サービス名だけではなく、オンプレミス版かクラウドサービスかを区別してください。
3. 2026年7月の更新が正常に適用されたか
Windows Updateなどの更新履歴を開き、2026年7月の更新が正常に完了しているかを確認します。「更新を確認する」操作を行い、失敗や保留の表示がないかも見てください。
Windows 11 version 25H2および24H2向けには、2026年7月14日付の累積更新プログラムKB5101650が公開されています。[7] ただし、Microsoftの公式ページ内にはOSビルド番号の表記差があるため、記事に記載された番号だけで適用済みかどうかを判断しないでください。端末上のWindows UpdateやMicrosoft Update Catalogなどの最新情報を確認する必要があります。
4. 必要な再起動が完了しているか
更新プログラムによっては、適用を完了するために端末やサーバーの再起動が必要です。更新データがダウンロードされていても、「再起動が必要です」と表示されている場合は、対応が完了していません。
業務時間中の突然の再起動を避けるため、担当者と実施時刻を決めます。ただし、IPAが早期適用を求めていることを踏まえ、期限を定めずに再起動を先送りすることは避ける必要があります。
5. 更新に失敗した端末や保留中の端末がないか
正常に更新できた端末だけでなく、失敗、確認中、対象外、再起動待ちとなっている端末を明確にします。利用者の自己申告だけに頼ると確認内容がそろわないため、端末名と確認日時を記録すると把握しやすくなると考えられます。
Windows Update、WSUS、Microsoft Intuneなどで一括管理している場合も、管理画面上の結果と実端末の状態に差がないかを確認する運用が望ましいと考えられます。
6. Windows 10端末がESUまたは対象LTSCに該当するか
2026年7月のWindows 10向け更新として、ESUと一部のLTSCエディションを対象とするKB5099539が公開されています。[8]
ESUは、通常のサポート終了後も一定期間セキュリティ更新を受け取るための拡張セキュリティ更新プログラムです。LTSCは、長期的な利用を前提とした特定のWindowsエディションを指します。
通常サポート対象外のWindows 10端末が、すべて一律に2026年7月の更新を受け取れるとは限りません。次の項目を端末ごとに確認してください。
- Windows 10のエディションとバージョン
- ESU契約の有無
- 対象となるLTSCエディションか
- 2026年7月の更新を実際に受信できているか
- 更新できない場合の移行方針と期限
移行やネットワークからの隔離が必要かどうかは、業務ソフトの対応状況やネットワーク構成によって異なります。具体的な方法は保守事業者などへ確認してください。
7. 更新後に主要な業務機能が正常に動くか
更新適用と再起動が完了したら、日常業務に必要な機能を確認します。税理士事務所であれば、会計・税務ソフト、電子申告、電子証明書などが主な対象です。社会保険労務士、行政書士、司法書士の事務所では、それぞれの電子申請や業務ソフトも含めます。
更新後の影響は各事務所の製品構成によって異なるため、特定の業務ソフトに問題が発生するとは断定できません。動作に問題がある場合は、記録を残したうえで製品ベンダーや保守事業者へ確認してください。
更新後は業務ソフトと電子申請の動作まで確認する
業務に必要な機能を絞って点検する
更新後の動作確認では、事務所で実際に使用している機能を対象にします。確認例は次のとおりです。
- 会計、税務、給与、労務、登記などの主要業務ソフトが起動するか
- 電子申告や電子申請に必要な画面へ進めるか
- 電子証明書が正しく認識されるか
- VPNや社内ネットワークへ接続できるか
- WordやExcelなどの主要ファイルを開けるか
- プリンターやスキャナーを利用できるか
- 顧客対応に必要な共有フォルダーやクラウド環境へ接続できるか
2026年7月のWindows更新では、未登録の第三者TDIトランスポートを使用するアプリケーションが、更新後に動作しなくなる可能性もMicrosoftから示されています。[7] TDIはWindows上の通信に関係する仕組みです。自事務所の通信・セキュリティ製品が該当するかは、製品名だけでは判断できないため、必要に応じて提供元へ確認してください。
緊急性と業務継続の両方を管理する
IPAが至急の更新適用を求めている以上、対応を先送りしないことが前提です。一方で、更新には再起動が必要になる場合があり、事務所固有の業務ソフトや周辺機器へ影響する可能性もあります。
編集部では、更新適用と業務継続を両立するため、対応責任者と期限を決めたうえで、業務への影響を確認できる単位で展開する方法が現実的と考えます。ただし、公開前悪用が確認された対象サーバーなど、緊急性が高い環境の対応を通常端末と同じ順番で遅らせるべきではありません。
具体的な展開方法は、端末数、管理環境、保守契約、期限のある業務を踏まえて判断してください。全端末を同時に更新するか、段階的に更新するかを一律に決めることはできません。
端末別のチェックシートを作る
更新状況を口頭や担当者ごとのメモで管理すると、未更新端末や再起動待ちを見落とす可能性があります。表計算ソフトなどを使い、次の項目を端末ごとに記録すると状況を整理しやすくなります。
| 確認項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 端末識別 | 端末名、利用者、設置場所 |
| OS情報 | Windowsの版、バージョン、エディション |
| 更新結果 | 適用済み、失敗、確認中、対象外 |
| 確認情報 | 更新履歴、OSビルド、確認日時 |
| 再起動 | 完了、待機中、不要 |
| 業務動作 | 業務ソフト、電子申請、証明書、VPN、印刷 |
| 問題対応 | 症状、問い合わせ先、回答、対応期限 |
| 確認責任 | 確認者、承認者 |
台帳を作るだけで脆弱性への対応が完了するわけではありません。実際の更新結果や再起動の完了、対象製品との照合まで確認する必要があります。
IT担当者がいない場合に保守事業者へ確認すること
IT担当者がいない事務所では、技術用語だけを伝えるより、確認してほしい事項をまとめて保守事業者へ送ると、回答の抜けを減らせる可能性があります。
問い合わせには、次の項目を含めてください。
- 当事務所でAD FSを使用しているか
- オンプレミス版SharePoint Serverを使用しているか
- 今回の更新対象となるサーバー、端末、Microsoft製品は何か
- 2026年7月の更新はいつ適用されたか
- 正常完了をどの情報によって確認したか
- 再起動待ち、更新失敗、対象外の機器はあるか
- AD FSを使用している場合、イベントID 1132を確認したか
- 業務ソフトや通信・セキュリティ製品への既知の影響はあるか
- Windows 10端末は更新およびサポートの対象か
- 未対応事項、担当者、完了予定日は何か
経営者や所長が把握すべきなのは、すべての技術的な作業内容ではありません。「何が対象か」「誰が対応するか」「正常完了をどう確認したか」「何が残っているか」を確認することが重要です。
今回だけの臨時対応で終わらせず、月例更新のたびに、公式情報の確認、対象製品との照合、担当者と期限の設定、更新結果の記録、業務動作の確認までを繰り返せる体制にすると、対応の属人化を抑えられると考えられます。
まとめ
2026年7月のMicrosoft製品の脆弱性について、士業事務所や中小企業が最初に行うべきことは、自組織の対象環境を把握することです。
まず、AD FSまたはオンプレミス版SharePoint Serverの有無を確認してください。該当する場合は、公開前悪用が確認された脆弱性への対応状況を、サーバー管理者または保守事業者へ優先的に確認します。
Windows端末では、自動更新の設定だけで対応済みと判断せず、更新結果、失敗の有無、必要な再起動の完了まで確認します。Windows 10端末は、エディション、ESU契約、LTSCへの該当性を個別に確認する必要があります。
更新後は、業務ソフト、電子申請、電子証明書、VPN、Office、プリンターなど、事務所の主要業務に必要な機能を点検してください。
環境の構成が分からない場合は推測せず、本記事の問い合わせ項目を保守事業者へ送りましょう。あわせて、端末別の確認台帳と責任者を決め、月例更新の定常業務として継続できる形に整えることが次のアクションです。
出典一覧
- IPA「Microsoft 製品の脆弱性対策について(2026年7月)」(2026-07-15)
- Microsoft「2026年7月のセキュリティ更新プログラム(月例)」(2026-07-14)
- Microsoft Security Response Center「2026年7月セキュリティ更新プログラム リリースノート」(2026-07-14)
- Microsoft Support「CVE-2026-56155: AD FS Distributed Key Manager container ACL hardening(KB5121391)」(2026-07-14)
- Microsoft Support「Description of the security update for SharePoint Server Subscription Edition: July 14, 2026(KB5002882)」(2026-07-14)
- Microsoft Support「Description of the security update for SharePoint Server 2016: July 14, 2026(KB5002891)」(2026-07-14)
- Microsoft Support「July 14, 2026—KB5101650」(2026-07-14)
- Microsoft Support「July 14, 2026—KB5099539」(2026-07-14)
この記事はAIが生成し、編集長のチェックを受けて公開しています。