デジタル庁「源内」とは?士業が生成AI選定に応用したい7つの観点
顧客との相談記録を要約したい、長い制度資料から必要な箇所を探したい――そう考えて生成AIを比較しても、「機密情報対応」「法人向け」という表示だけでは、顧客資料を入力してよいか判断しにくいものです。特に行政書士や中小企業診断士の事務所では、便利さだけでなく、情報の保存や利用権限、出力の確認方法まで決める必要があります。
デジタル庁の生成AI利用環境「源内」は政府職員向けであり、民間事務所への完成済みサービスとして提供されているものではありません。本記事では、「源内」の導入方法や制度上の適合判断ではなく、公式資料から読み取れる管理の考え方を、士業事務所が生成AIを選定・運用するときの確認項目へ応用する方法を扱います。
「源内」とは?政府職員向けガバメントAIの対象と現在地
「源内」は、政府職員が生成AIを利用するための環境です。デジタル庁は、政府職員が安全・安心にAIを活用するための基盤である「ガバメントAI」の第一歩として位置付けています。
デジタル庁では2025年5月から全職員が利用できる環境を運用し、対話型チャットのほか、国会答弁検索AIや法制度調査支援AIなどを提供して検証してきました。その後、2026年5月には全府省庁の約18万人の政府職員を対象とする大規模実証が始まりました。デジタル庁の発表によれば、2026年5月29日時点で約10万人が利用可能であり、対象府省庁と職員数を順次拡大する方針です。
ここで注意したいのは、「約18万人が利用済み」という意味ではなく、約18万人を対象に環境整備と実証を進める計画だという点です。また、公式に示されている対象者は政府職員です。行政書士や中小企業診断士を含む民間の士業事務所が、政府運用版の「源内」を直接利用できるとの公式発表は確認されていません。
「源内」で提供されるAIアプリは、大きく次の2種類に分けられています。
- 汎用AI:対話型チャット、文章作成、要約、校正、翻訳などに使うアプリ
- 行政実務用AI:行政職員の業務遂行を支援する、行政実務に特化したアプリ
さらに、ガバメントソリューションサービス(GSS)のポータルサイトからシングルサインオン(SSO)で利用できるとされています。SSOとは、一度の認証で複数のシステムへアクセスできる仕組みです。ただし、認証プロトコルや多要素認証、端末制限などの詳細は、今回確認した公式ページでは明らかになっていません。
士業事務所にとって重要なのは、「源内と同じ製品を選ぶこと」ではありません。汎用業務と専門業務を分け、誰がどの情報へアクセスできるかを管理する設計が、生成AIの選定基準を考える参考になります。
「機密情報対応」を一項目で判断しない|入力・参照・学習を分ける
デジタル庁における「源内」は、政府統一基準に準拠したセキュリティのもと、機密性2情報を含むプロンプト入力に対応していると公表されています。ただし、この説明は「デジタル庁においては」と対象範囲が限定されています。
したがって、全府省庁の環境、公開されたOSS、民間企業が構築する派生サービスでも同じ条件が適用されるとは断定できません。「政府の環境で扱えるから、同じ名称やソースコードを使った民間環境でも扱える」と読み替えないことが大切です。
デジタル庁の「各府省庁生成AIシステム定期報告概要」では、機密情報の取扱いを少なくとも次の段階に分けて集計しています。
- 利用者が指示文へ情報を入力する
- 登録された情報を参照して回答を生成する
- 入力情報などを追加学習に利用する
これは、士業事務所がサービスを比較するときにも使える分け方です。顧客名を入力できるかという一点だけでなく、その情報がどこに保存され、何に参照され、モデルの学習に使われるかを別々に確認する必要があります。
編集部では、候補サービスの利用規約、プライバシーポリシー、管理者向け仕様書を開き、少なくとも次の項目を一覧にする方法が実務的だと考えています。
- 入力を認められている情報の範囲
- 回答生成時に参照されるデータ
- 入出力がモデルの追加学習や品質改善に利用されるか
- データの保存場所と保存期間
- ログに記録される内容と、そのログを閲覧できる人
- 利用者や管理者がデータを削除する方法
- 契約終了後のデータ保持期間と削除条件
「保存しない」と書かれていても、会話履歴、監査ログ、障害調査用データがそれぞれ同じ条件とは限りません。分からない項目は安全だと推定せず、「プロンプトと添付ファイルはどこへ、何日間保存されますか」「解約後にバックアップを含めて削除される時期はいつですか」と、提供事業者へ確認する質問として残します。
同資料によると、2026年3月末時点で集計対象となった政府職員向け生成AIシステム224件のうち、機密性2情報または個人情報を扱う案件は90件でした。ただし、これは各府省庁の生成AIシステム全体に関する集計であり、「源内」単独の導入実績や安全性、事故率、導入効果を示す数字ではありません。
個人情報や業務上の秘密を特定サービスへ入力できるかどうかは、個別の情報、契約、各士業に適用される規律によって異なります。適合性の判断は、候補サービスの契約条件と一次情報を確認したうえで、事務所の責任者または必要に応じて該当分野の有資格者へ委ねてください。本記事では、その判断に必要な情報をサービス画面や規約から集める方法に範囲を戻します。
汎用チャットと専門業務用AIをどう分けるか
「源内」が汎用AIと行政実務用AIを分けている点は、士業事務所の運用設計にも応用できると考えられます。ただし、環境を分けるだけで安全性が確保されるわけではありません。用途ごとに参照資料、利用者、権限、確認責任者を決める必要があります。
公開情報だけを扱う汎用用途
生成AIの利用を始めたばかりなら、まずは公開情報だけで完結する業務を選ぶ方法があります。例えば、公開済みの行政資料の要約、一般向け記事の構成案作成、自分で作成した文章の校正、外国語の公開資料の仮訳などです。
この段階では、顧客名、相談内容、未公開の経営資料を入力しません。試行対象を1〜2業務に絞り、導入前後の作業時間、修正回数、事実誤認、最終確認にかかった時間を記録します。生成時間だけが短くても、修正や原文照合に時間がかかれば、業務全体が短縮されたとはいえないためです。
開業直後の事務所であれば、最初の棚卸しと試行には30〜60分程度を確保し、新たなシステム構築よりも、利用中のサービスの設定画面と規約を確認することから着手できます。追加費用が発生する有料プランへの変更は、必要な管理機能と試行結果を確認してから判断すると、予算を配分しやすくなります。
顧客・案件資料を扱う専門用途
相談記録、顧客別資料、事務所内の手引などを検索・要約する場合は、公開情報を扱う汎用用途とは別の管理が必要です。RAGは、登録した文書を検索し、その関連部分を参照して生成AIに回答させる仕組みです。一般的なモデルの知識だけに頼らず、指定資料を根拠候補として使える一方、登録資料や権限設定が不適切なら、古い情報や閲覧権限のない情報が回答へ混ざる可能性があります。
専門用途を設計するときは、顧客や案件ごとに参照範囲を分け、必要以上の資料を登録しないことが基本的な確認項目になります。データ登録時の権限だけでなく、回答を生成する利用者がどの資料を参照できるかも確認します。
例えば、行政書士事務所でヒアリング記録を整理する場合は、音声や文字起こしデータの保存先、案件担当者以外の閲覧可否、要約後の原データ削除手順を決めます。中小企業診断士が経営資料を検索対象にする場合は、顧客ごとのアクセス権、資料の版、分析終了後の削除や返却方法まで決めておく必要があります。
アカウント管理では、候補サービスの管理画面や法人向け機能一覧で、SSO、多要素認証、利用者別権限、監査ログ、端末制限、退職・契約終了時のアカウント停止が可能かを確認します。少人数事務所でSSOが常に必要とは限りませんが、利用者が増えたときに権限をまとめて停止できるかは、比較材料になり得ます。
AIの出力を確定判断にしない確認工程
法令、制度、申請、経営支援に関係する回答では、RAGを使っても正確性や最新性が自動的に保証されるわけではありません。AIが示した回答だけで、許認可要件への適合、手続きの可否、制度の有利不利などを確定しない運用が必要です。
出力を使う前に、回答が示した原典を開き、施行日、更新日、対象範囲、数値、固有名詞を照合します。参照元が表示されない場合は、根拠確認が必要な用途への採用を見直す判断も考えられます。個別案件への法令・制度の適用判断は、所管行政機関の情報を確認し、担当する有資格者が行ってください。
公開OSSはどこまで使える?商用利用と運用責任を切り分ける
デジタル庁は2026年4月24日、「源内」の一部を商用利用可能なライセンスによる無償のOSS(オープンソースソフトウェア)として公開しました。OSSとは、ライセンス条件のもとでソースコードを閲覧し、改変や再利用ができるソフトウェアです。
公開対象には、Webインターフェースと構築手順、一部AIアプリの開発テンプレートや実装が含まれます。具体的には、行政実務用RAG、LLMを自らの環境へ配置するセルフデプロイ、最新の法律条文データを参照する法制度AIアプリの再現可能な実装などです。
公開された範囲と公開されていない範囲
公式発表で主な利用者として想定されているのは、地方公共団体、政府機関、それらにサービスを提供する企業です。行政書士・中小企業診断士事務所向けの完成済みサービスとして公開されたものではありません。
また、公開物は「源内」の一部です。政府運用環境で使われている認証、監視、セキュリティ設定、組織内の承認手順、障害対応体制まで、すべて公開・再現されているとの情報は確認できません。ソースコードを動かせたことと、顧客情報を扱える業務環境を構築できたことは分けて考える必要があります。
商用利用可能でも安全な商用運用とは限らない
商用利用可能なライセンスは、ライセンス条件を守れば事業で利用できることを示します。しかし、認証、アクセス制御、ログ管理、バックアップ、脆弱性対応まで自動的に整うという意味ではありません。
OSSを採用する場合は、少なくとも次の運用責任を誰が負うか確認します。
- 認証と利用者別の権限設定
- 稼働監視と監査ログの確認
- 脆弱性情報の収集と更新作業
- データのバックアップと障害時の復旧
- 依存ソフトウェアの更新とライセンス確認
- 問い合わせや障害への対応
- 公開終了や利用技術の変更に備えた移行
デジタル庁は、公開OSSについて永続的なメンテナンスを保証せず、将来公開を終了する可能性も明記しています。特定事業者への依存を抑えられる可能性がある一方、自組織または委託先が保守を継続する責任を負います。
自社保守か管理済みサービスかを判断する項目
OSSを試作できる技術者がいることと、長期運用できる体制があることも別です。構築担当者が退職した場合、障害が休日に起きた場合、重要な脆弱性が公表された場合に、誰が何時間以内に対応するかを決められないなら、管理済みサービスも比較対象に入れる必要があります。
比較時には、初期構築費だけでなく、クラウド利用料、監視、更新、バックアップ、障害対応、移行作業を含めた年間費用を見積もります。料金の適否は組織の規模や要件によって異なるため、編集部が一律の金額を示すことはできません。見積書では「構築費」と「月次保守費」の内訳を分け、認証設定や復旧作業がどちらに含まれるかを確認することが、判断材料になります。
まとめ|自事務所の生成AI利用を7項目で棚卸しする
「源内」の政府運用版を士業事務所が直接使えるとの公式情報は確認されていません。士業が持ち帰れるのは、政府と同じ製品ではなく、生成AIの用途、取扱情報、権限、確認工程、保守責任を細かく分ける考え方です。
まず、現在利用中または検討中の生成AIを一つだけ選び、次の7項目を紙や表計算シートへ書き出してください。
- どの業務で利用するか
- 誰が利用し、誰が管理するか
- どの情報を入力するか
- どの資料を参照させるか
- 入出力、ログ、追加学習をどう扱うか
- 誰が原典を確認し、最終判断するか
- 認証、保守、削除、移行の責任を誰が負うか
次に、候補サービスの管理画面、利用規約、プライバシーポリシー、データ利用方針を開き、各項目の根拠となる記載を探します。記載が見つからない場合は空欄を推測で埋めず、提供事業者への質問として残してください。
最初の試行には、公開資料の要約や文章校正など、機密情報を扱わない1〜2業務を選びます。作業時間、修正回数、誤回答の件数、原文確認を含む総所要時間を記録し、削減できた時間より確認負担が大きい用途は対象や手順を見直します。
顧客資料を扱う段階へ進む前には、入力・保存・参照・学習・ログ・削除の条件と、利用者別の権限を責任者が確認します。これが、「機密情報対応」という一言に頼らず、自事務所に必要な生成AI環境を判断するための具体的な着手順序です。
出典
- デジタル庁「ガバメントAI『源内』」(確認日:2026-08-03)
- デジタル庁「全府省庁の約18万人の政府職員を対象としたガバメントAI(源内)の大規模実証を開始しました」(2026-05-28)
- デジタル庁「ガバメントAI『源内』をOSS(オープンソースソフトウェア)として公開しました」(2026-04-24)
- デジタル庁「第5回先進的AI利活用アドバイザリーボード」(確認日:2026-08-03)
- デジタル庁「各府省庁生成AIシステム定期報告概要(令和7年度第4回)」(2026-07-14)
この記事はAIが生成し、編集長のチェックを受けて公開しています。
最終更新日:2026年8月3日
編集:YataGarasu編集部